下北沢路地裏エアポート

Shimokitazawa Backstreet Airport

【香港】2階建トラム

沢木耕太郎の小説「深夜特急」を読んだ記憶の影響だろうか。香港に来ると毎回、何かが動き出すような躍動感を覚える。本の中がどんなストーリーだったのか今では全然思い出せないのだけれど、主人公の視点で描写された旅が始まる高揚感と、背景となるこの街の雑然とした雰囲気のギャップだけは今でもとても強く印象に残っている。
本が書かれた年代とはだいぶ街並みも、国の制度すらも変わっているけれど、香港の中心部”香港島”の界隈にはいかにも香港らしい、という街並みが未だにある。
仕事が早く終わった時や、旅行で時間を持て余した時、香港島まで足を伸ばし”その街並み”に会うため2階建トラムに乗ってよく出かける。

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香港島 2階建トラム

空いていればいつも、2階席に上がり一番前の席に座る。高い所、移動好きの性。見晴らしのよい席から見る香港の街並みはこの上ないエンターテイメント。

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香港 トラムの2階席から

対向車両とぶつからんばかりのすれ違い。細い路地を入っていく路線は、林立するビルの林を走り抜ける。
2階席からはそんな雑然とする香港をとても近く、でも少しだけ高い視点から望むことができる。

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香港の路地 トラムの2階から

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香港の交差路地 トラムの2階から

 

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トラム 料金表


このトラム、どれだけ乗っても料金は2.6HKD (約30円)と格安。ただし駅と駅の間が近く、信号や車の渋滞などの影響も受けるため長距離の移動には時間がかかるのが難点。またエアコンは効かない。窓を開けて走ってはいるが風は弱く、夏に近づきつつあるアジアの空気は既に暑い。快適な移動を求めて地下鉄やバスが発達するのは、時代の流れかもしれない。
シドニーは地下鉄が整備され、路上の線路をはずしトラムを撤去する場面に遭遇した。快適さや経済性を求めたら、ここ香港も廃止される可能性はある。その収益対策かは不明だが、どのトラムもラッピング広告がされているのが香港のトラムの特徴かもしれない。
よく使っているマリオットホテルズのポイントプログラム"Marriott Bonvoy"のラッピングトラムとすれ違ったので、思わずシャッターを切った。

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トラム ラッピング広告


この街の雑然さを運ぶ、エネルギーに満ちた歴史ある移動手段。
値段も安く、近距離の移動や、目的もなく終点までいってみようという好奇心の対象としてはとても有益。
路面電車のある街並みが香港の魅力を高めていると思うのだが、この街はどういう未来の選択をしていくのだろうか。
これからも、トラムの2階席から観察していきたいと思う。