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Shimokitazawa Backstreet Airport

【ヨーロッパ】聖杯伝説4・ビールと聖杯

緊急事態宣言による外出自粛が日本全国に広がり、移動もままならない昨今。
業務も渡航も開店休業状態。旅先の履歴を書いてはいるが、どんどん遠い過去の事になっていく。

自宅でも出先でもやる事は無くならないので、此れ幸いと知識構築やその他雑務に取り組んではいるが如何せん飽きがくる。
長い人は2月から在宅勤務が続いているらしく「集中力と緊張感がすっかり欠如してしまった」と友人から嘆きの連絡がきた。

充実した生活にはメリハリが必要。働くことも、走ることも動くこともあってご飯が美味しく感じるし、ぐっすり眠る事ができる。
Mr.childrenが以前「世界一のお酒を見つけました それは必死で働いた後の酒です」とある曲で歌っていた。
酒を飲めなかった僕がそれを理解できたのは世界を飛び回るようになってからの事。
というわけで聖杯伝説はビールの話へ。

修道院のビール

ベルギービールは多くが修道院で作られていた。
修道院の収入源にしたり密かに飲んだりしてたらしい。いまでも多くのアビービール(abbey=修道院)があるのはその名残。
なかでもトラピスト派と呼ばれる宗派の修道院で、今でも変わらぬ伝統のもと作られトラピストビールの名を名乗れるビールは世界でも10種類程しか認められていない。

Trappist Beer 2015-08-15.jpg

[代表的なトラピストビール
上記の通り多くがベルギーにあり、修道院の管理下にある醸造所で作られ販売される。
またトラピストを名乗るには厳格なルールがある。
以下wikipediaからの引用だが、主なものは3つ。

  • トラピスト会修道院の修道士が自ら醸造するか、修道士の監督の元で醸造されたものであること。
  • 修道院の敷地内の醸造所で醸造されていること。
  • 販売は営利目的で行ってはならず、収益は修道院のメンテナンスや運営費用に充て、残額は慈善団体に寄付すること。

となっている。
厳格な管理をされているからなのか、手に入りにくかったりあまり出回らなかったりするようだ。
日本でも手に入るものもあるが、ここでは実際醸造所を訪れたウェストマールをご紹介したい。

ウェストマール醸造

ベルギー北西部にあるウェストマール醸造所。深い森のそばにある。

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ウェストマール醸造

場所はこの辺り。アントワープから車で30分ほどのところ。


[ウェストマール醸造所]
なんでもここのビールは「死ぬ直前にもう一本だけ飲みたいビール」として名高いんだとか。

kotaro-journal.com
醸造所の対面にレストランがあり、そこではドラフトのウェストマールが飲める。

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ウェストマール レストラン

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ウェストマール レストラン

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ウェストマール ドラフト

ベルギービールというと多くがボトル入りで流通しているのだが、醸造所直送なので生ビールが飲める。これが旅の醍醐味。仕事後でもあったし”世界一の酒”と呼べた。

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ウェストマール ドラフト

誇らしげに刻まれた”TRAPPIST”の文字。
味は驚くほど滑らか。とても美味しい。ボトルの物だと苦味が残るが、ドラフトにはほとんどそれがない。飲みすぎないように注意した方が良い。

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ウェストマール チーズ

付け合わせに頼んだ自家製のチーズ。
とても濃厚で、濃いビールによく合う。

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ウェストマール チーズ

お土産用にもこのような形で売られていた。

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ウェストマール醸造所 お土産

ボトルビールと、グラスも販売されている。
ベルギービールの多くは専用のグラスがある。その大きさと形で飲むのが一番香り高く美味しく飲めるとの事。

トラピストビール グラスの型

お気付きの方もいるかもしれないが、トラピストビールのグラスはどれも”聖杯型”をしている。
諸説あるし、実際は「美味しく飲めるから」らしいのだが、偶然と思えない記述をこの本の中で見た。

【レンヌ=ル=シャトーの謎】

”イエスの血脈と聖杯伝説”というサブタイトルの本。
辞書くらいの分厚さがある聖杯研究の決定版ともいうべき本なのだが、この本の中でトラピストビールの一角を成す、ベルギー南部の修道院の名前が記載されていた。

先の記事で触れた、聖杯の守り主とも言われるテンプル騎士団が今やビールで有名なオルヴァルという修道院に立ち寄ったと言う。

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オルヴァルについて

そのグラスの形は偶然か?
それとも‥
オルヴァルはベルギー南部、フランス国境近くにある。
外出自粛要請のなかではあるが、想像の翼ははるか欧州に。
次回ベルギーに足を運べるのを心待ちにしている。

参考URL :
ベルギービール専門店 ドルフィンズ:大阪|梅田|天満橋|堺筋本町

【ヨーロッパ】聖杯伝説3・ローズライン 世界の中心

ダヴィンチ・コードを再読してパリに降り立ったのがほんのひと月前とは思えないくらい、世界の様相は一変してしまった。
”stayhome”を合言葉に皆自宅とその近辺での生活を余儀なくされ、自由に出回る事ができた時期を懐かしく思い始めている人も多いのではないか。
オンライン〇〇が流行し、外に出られない鬱憤をいっとき晴らす事ができても快晴にはならない心の空模様。やがて人は気づきだす、ああ、やっぱり会わなきゃダメだよね、と。
なんでもかんでも画面で見られて手に入ったような気になっているけれど、スクリーン越しのデータ容量は5Gでもたかだか数十GB程度で、現地で感じる体験に及ぶことはない。今までも、これからも。
建築を教える友人が、学生にこんなことを言われたと嘆いていた。

先生「その建築を学ぶために、ちゃんと見に行ったのか?」

生徒「はい!google street viewで見ました」

先生「…」

建築などは現地を知る事が最も大事。
僕も不動産をいくつか所有しているが、現地に行かないと周辺環境や土地の状態、例えをあげるなら日当たりや臭い(これは結構重要。水の流れがあったり、滞っているような場所は現地に行くと悪臭がするのでわかる)人や風の流れなどデータとして現れない情報がないと正確な投資判断はできない。
(データだけで大儲けしている猛者も少数いますけど)
そういえば「足を運ばない投資家には物件を売らない!」と豪語する不動産屋さんもいたな。

パリが世界の中心だったころ

足を運ぶ事、体験することの価値がこのコロナウィルス騒動で見直されることになるだろう。
本を読み、wedサイトで情報を集めたところでその地で感じた感動には敵わない。
だからみな高いチケット代を払ってでも現地へ行く。
実感したのはパリの左岸、カルチェラタンのサンシュルピス教会。

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パリ サン=シュルピス教会

場所はこの辺。オデオンやサンジェルマンデプレの駅から歩ける。


ダヴィンチ・コードの中でも重要なシーンだったこの教会。
本で読んだ想像とは違いものすごく大きな教会だった。

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パリ サン=シュルピス教会

もうコロナウィルスの影響が叫ばれ始めている頃だった。座席はひと席離して座ってくださいという張り紙が置いてあった。

世界の中心

現在世界標準時GMTグリニッジ標準時)と呼ばれる。緯度経度のすべての基準になっているのは英国のグリニッジで、そこを±0時として時差を設定している。

gakusyu.shizuoka-c.ed.jpけれどこれは当然後付けの結果であって、世界の標準時が英国でなかった時代も存在する。
この教会が出来た当時、まさに世界の中心はパリだった。
ダヴィンチコードでは、その可能性に触れ、その証拠を探しにこの教会に来るシーンがある。
そこで主人公のラングドンが見つけるのがこの線だ。

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パリ ローズライン

教会の祭壇の前を、斜めに貫く不自然に伸びた大理石の線。
この線は正確に南北を指し示している。コンパスを向け針が違わず真北を指した時は思わず鳥肌がたった。

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パリ ローズライン

伸びた線は教会内のこのオリベスクにつながっている。
ローズライン(rose line)とは南北を貫く基準となる子午線という意味だが、
コンパスの針のことをコンパスローズと呼ぶことにも同じ意味がある。
ではなぜ南北の基準線に薔薇(rose)という意味が使われているかが、この聖杯伝説にまつわる秘められた世界の謎だ。

謎や情報は書面からの読み取れる。けれどそれでは十分ではない。
現地に行かねば読み取れることの方がこの世界には遥かに多い。

(次回に続く)

【ヨーロッパ】聖杯伝説2・パリのテンプル騎士団

マグダラのマリア

キリスト教の歴史の中でも謎が多いとされる人物、マグダラのマリアは娼婦とされたり、時にキリストの妻だったとされたり振れ幅が大きい。
かつ”マリア”という名の通りキリストの母でもある”聖母マリア”と混同されることも多く、正確に存在を把握するのは無信仰の日本人にとって相当な興味を持たないと難しい。
マグダラのマリアダヴィンチコードという作品の中で扱われ有名になりました」というガイドさんの一言から始まった探求の第一歩。
ベルギーで疑問を抱かなければ、僕も素通りしていたはずだ。

ダヴィンチ・コードのネタ本

手始めに読んだ本をご紹介したい。
ダヴィンチ・コードはフランスなどヨーロッパを舞台に話が進行する。キリスト教の伝記や聖書の福音書をなどをヒントに話が進んでいくのだが、どうやらマグダラのマリアはかなり重要な存在らしい。
それを読み解きたくてダヴィンチ・コードのネタ元と言われるこの本を購入し読んだ。

:マグダラのマリアと聖杯]
帯に思いっきりセールス文句が書いてあるのが気になるが、事実それに違わぬ内容だった。
マグダラをめぐる悲劇とその後の伝説。
現代まで語り継がれ、疑いもなく常識と思われていた秘められた真実など、読み出したら止まらなかった。
マグダラのマリアとは?聖杯とは?タロットカードの意味?
テンプル騎士団が関わってくる?
そしてそれは現代まで影響している‥??

詳しく書きたいのだが、ネタバレになるのでご興味のある方はぜひ購入して読んでみて欲しい。世界の秘密に迫れることは間違いない。

テンプル騎士団

陰謀論などの都市伝説で必ず出てくる、十字軍の雄であるテンプル騎士団
都市伝説系TV番組や、それ系youtuberが数々発信してくれているので細かい説明は省くが、マグダラのマリアが残した聖杯を守りつづけているとされる。
いまだにその存在が囁かれるのは以前の影響力の大きさと、解散とともにそれを忽然と消せるわけがないという推測、それに加え彼らが守ってきたとされる聖杯にまつわる伝説があるからだろう。
中世においてヨーロッパ各地に支店を持ち、現在の銀行業務の先駆けをしていたとされるテンプル騎士団。一国の資産を上回る富と強固な武力、高貴な精神を兼ね備えた最強の集団。
彼らの痕跡が残る場所がいまだにある。
彼らの本拠地だったフランス・パリのテンプル地区だ。

テンプルの教会

ベルギーを訪れてから約1ヶ月後、幸運にもフランスを訪れる予定があったのでその地に足を運んだ。
パリにある、その名も”テンプル地区”。
場所はこの辺り。

]

パリ右岸マレ地区の北部。まごう事ないTempleという駅がある。南北にtemple通りが走りその東側がかつて騎士団の本拠地だった修道院がある場所だ。

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パリ テンプル

テンプルの駅から通りを南方面に見たところ。この通りの左側がかつての修道院

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テンプルスクエア

テンプルスクエアという広場があるがその名残はほぼ見受けららない。
観光用の遺跡の説明プレートがある。

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テンプル塔

テンプル修道院塀の中にあったテンプル塔は当時パリでも有数の高さを誇ったらしい。いまでも面影もないのだが、その場所にちなんだブラッスリーに”テンプル塔”の名は引き継がれている。
パリのロックダウンの影響で残念ながら店はクローズしていた。
写真ではフランス人がマスクをして街を出歩いている姿を捉えているのも印象深い。今ではこういった光景も珍しくなくなってきているのだろう。

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テンプル地区 教会

正確にはテンプル修道院の外側になる位置だが、歴史の痕跡を探してテンプル通りに面する教会に入ってみた。
ハンガリー聖エリザベス教会という名の教会だ。とても静かで荘厳な聖堂だった。

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テンプル地区 教会

教会内にあったこのマーク。十字を示す。
テンプル騎士団の後を継いだとされる聖ヨハネ騎士団のマークらしい。正確な意図や由来はわからない。

なんらかの縁がある事は間違いなさそうだ。これがテンプル騎士団の痕跡、と言い切れないのは残念だが、書籍の中で得た知識が実際に目の前にヒントとして出てくる。
実際にその場に行く、旅の醍醐味そのものだ。

【ヨーロッパ】聖杯伝説1・アントワープ

隠された真実と伝説

この情勢をうけ業務変更や予定外の余暇も増えてきた。僕も4月半ばに少し長めの休暇を取り帰省など移動計画をしていたのだけど、渡航が多かった自分が新たな地に行くのも躊躇われるため自宅で過ごす事に。
そんなときこそ、ではないが今までできなかったいろいろな事が捗る。
同僚からは「家の中ひとまわり掃除して2周目に入った」や「ニンテンドーswitch買ったので通信でゲームしよう」などと言う誘いが届く。
おそらくみなさん同じような感じだと思うのだが、この期間を利用してかねてからやろうと思っていたことを進める。
それがタイトルにもした聖杯伝説の研究。

探求のきっかけ

ダヴィンチ・コードという作品はご存知の方も多いと思う。10年ほど前に一世風靡し様々な憶測や流行を呼んだ作品だ。
ざっくり言えばキリスト教にまつわる様々な謎を、画家のレオナルド・ダ・ヴィンチが残した作品を手がかりに現代の象徴学者がトラブルを乗り越え真実に迫るというストーリー。

この作品は内容や謎も興味深いのだが、もっとも面白いのは劇中に描かれている事柄が現代にもその痕跡を残していて、実際に足を運ぶとそれに触れられる事だと思う。
10年ほど前読んだ時には、面白かったなあとは思ったが内容は全く記憶に残らなかった。
当時はそれを受け取る器がなかったのだが、今頻繁にヨーロッパに行くようになりそのメッセージが全く違うものに見える。具体的には数百年前から残されている建物、教会や絵画・壁画などに触れた時の好奇心の広がり方が全く以前とは違う。
作品のネタバレにもなるので詳しい内容は控えるが、伝説として語り継がれる”聖杯”にまつわるストーリーがメインシナリオとなっていて、今では聖杯のありかに夢中な”聖杯研究家”への一歩を、僕も踏み出していると言えなくもない。
(探検家や冒険家という響きに憧れがあり、インディ・ジョーンズの魅力を語り新卒時の入社試験を突破した事がある‥どうかご容赦願いたい)

アントワープ聖母大聖堂 ルーベンス

すべてのきっかけになる出来事は今年の2月に訪れたベルギー・アントワープだった。

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アントワープ (聖母大聖堂改装中)

フランダースの犬」の舞台としても有名な聖母大聖堂。
場所はこの辺り。ベルギーの首都ブリュッセルからは電車で30分くらい。アントワープの駅から中心部まではかなり歩く事になるので、バスかタクシーを使った方が楽かもしれない。

この聖堂にある宗教画家 ルーベンスの書いた絵画の前で、主人公のネロとパトラッシュは息絶え天に召される。
感涙を呼んだシーンで多くの日本人が覚えているだろうアニメだが、実は現地ベルギーのフランドル地方ではそんな有名では無いらしい。
この教会の前で涙しているのは日本人ばかりで、なぜ泣いているのかわからず不思議がっている現地の人々、という光景が頻繁にあったらしい。

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アントワープ ネロとパトラッシュ

そのような事情を受けて出来たモニュメント。なのだが‥パトラッシュの犬種が日本人お馴染みの犬種ではなく、あきらかに鼻の長いグレイハウンドのようなタイプ。ネロも可愛らしい幼児のようで、なんだかなあと思ってしまう。

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アントワープ ルーベンス

そしてこの絵がルーベンスの絵。ネロが見たいと願ったベルギーの至宝。聖堂の奥に飾られている。大判でものすごい迫力がある。
教会の中には対になった2枚のルーベンスの絵があり、それぞれキリスト昇架、キリスト降架のシーンが描かれている。写真を掲載したのはキリストが十字架から降ろされる降架の方だと思われる。

世界の秘密 聖杯伝説

この絵が僕の好奇心を一気に加速させる事になった。実はアントワープを訪れるのは2度目でこの聖母大聖堂にも来た事はあった。だがこの時は夫婦でベルギーに旅行に来ていた友人と合流し、日本語ができるガイドさんを伴っていたため絵の解説を詳しく聞く事ができた。
中央の絵の下方、真ん中あたりにいる深緑色の服を着た女性の名を聞いた時だった。

「彼女は”マグダラのマリア”と言われています。
キリスト教の聖人ですが、娼婦と言われていたり、イエスの妻だったと言われていたり、背景がわからない様々な謎がある人物です」
という説明だった。
そしてこう付け加えられた。

マグダラのマリアダヴィンチ・コードという作品のなかで扱われ有名になりましたね」


‥昔読んだな‥
けど全く覚えてない。
マグダラのマリアの名前だけ聞き覚えがあるのはダヴィンチ・コードを読んだからか。
とこの時は思った。このちいさなきっかけが途方もない冒険に繋がる事になった。
(長くなるので次回につなげます)

【パリ】悪化する世界情勢

悪化する世界情勢

どんどん変わるスケジュールとそれに対応するための準備でなにかと暇ができず、ようやくブログを更新する余裕ができた。
こんな中でも仕事がある事はありがたいのだと思うが、いままでは余裕がなさすぎた。
忙しすぎても余裕がないし、逆に3月末から始まったコロナ自粛や、先日の日本における緊急事態宣言もそうだが、余裕がありすぎても人はダメになる。
いい塩梅が一番良くて一番難しいのかもしれない。
同僚からも在宅勤務や帰休で時間を持て余している報告がちらほら届く。僕も今日からしばらく暇ができそうなので、やりたくてもできなかった事をまとめて取り組む計画をしている。このブログに関連する事柄もあるので、それに絡めて発信できればとも思っている。

ヨーロッパにおけるロックダウンと日本における自粛要請

日本も一昨日緊急事態宣言が発出され、外出における自粛要請が出た。けれど要請であって、命令や指示ではない。つまり店を休んだり、外出に対しての法的拘束力は無いのが日本。
対する欧州の場合、国や地域にもよるが法的な根拠があり外出や休業しないなどの行為は明確に違反となり罰則がある。
奇しくもフランスのロックダウン開始日に出くわし、パリの街が完全停止する様を目の当たりにした。

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パリ ロックダウン

休業指示は出たが、外出規制が発令される前という時期だったので、停止していく街をつぶさに観察する事ができた。
スーパーとパン屋さん以外本当に閉まっていた。生活必需品の中にパンがはいり、パン屋さんの営業は継続しているというのもフランスの特徴だ。この時は泊まっていたホテルのキッチンもルームサービスも停止してしまった(当然街のレストランやブラッスリーも閉店)ので、食料を確保するにはスーパーかパン屋さんに行くしかなかった。
温かいものが手に入るのはパン屋さんだけだった。

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パリ パン屋さん

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パリ パン屋さん

カラフルなショーウィンドーが目を引く。通常であればパリを彩ってくれる色彩なのだが、こういう非常時にはケーキよりパンやスープに手が伸びる。
このパン屋さんはホテルの近所で評価が高かった。パンも美味しいし、スープにもいろいろつけてくれる。店員さんも親切だった。

場所はこの辺り。
パン屋さんの名前は「JOSEPH」。

しかしふだんこだわりが強くて主張や文句ばかり言うフランス人が、いざ封鎖となると一斉にそれに従うのはすごく不思議だった。
現地で駐在の友人から聞いたのだが、そうは言っても彼らは自分たちが選んだリーダーの指示という自覚があるのと、休業したとしても補償を確実にしてくれるという確信があるというのが理由なんだそうだ。
同時に友人は「日本でここまでやるのは無理かもね」とも言っていた。
今まさにそういう状況になりつつあるわけだが、日本の迷走はもうしばらく続きそうな気がしている。
(ちなみに帰国は無事に出来、所属企業の保護のもと通常業務に復帰しております)

【シンガポール】世界情勢を鑑みて

この数週間に激変した世界の状況。
3月に業務と休暇で訪れた5カ国は、今では訪問も難しい。
月初にシンガポールで会った在住の友人は「日本に帰ろうと思ってたけど、帰ったら再度入国できる見込みがない」とのことで、3月末東京での再会はキャンセルになった。
ようやく仕事の山場に一区切りがつき、振り返る余裕ができたものの来月の仕事の予定再編が相次いでいる。
行く予定だった場所は変わり大きく空いたスケジュール。ここしばらく多忙すぎたのでちょうどいいと言えばちょうどいいのだが、欧州のように外出禁止が徹底されればまた状況が変わってくる。
しばらくは様子を見た方が良さそうである。

現状とのギャップ

本当は搭乗記を書こうと思って用意していたのだけれど、あまりに情勢にフィットしていないのでやめることにした。
目新しいネタになるとやはり航空会社の窮困だが、それも目まぐるしく変わっていくので追いつかない。
自分の体験と絡めるとNZに渡航した際に利用したCXが90%以上の便をキャンセルし、僕が利用したNRT-HKG-AKLのルートも今は飛べない。
また今月フランスに行く際に使ったEYのNRT-AUH-CDGも既に繋がっていない。
分断されていく世界。今後どうなるのか。また自分の場合は業務にも影響があるので注視しなければならない。

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キャセイパシフィック A350

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エティハド B787

共に成田から出発した、互いに違う最新鋭機材が印象的だった2つのエアラインのフライトについてはまた改めて振り返る機会を作ろうと思っている。

混沌の前のシンガポール

月初に訪れたシンガポール、この時はまだ出入国もわりとゆるかった。外出も店舗の営業も自由。ただし株価が歴史的な暴落をした日だったので忘れない。そしてそれをネタに新たな友人ができたのも忘れられない日。
彼とはあの日からずっと投資や各々の国の情報を交換し合っている。そんな理由からも渡航規制の再開を待っている。

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ラッフルズホテル ブティック

この時訪れたシンガポールのシンボル、ラッフルズホテルのブティック。長らく改装中だったのがリニューアルオープンしていた。

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ラッフルズティー

綺麗になったブティックに、パッケージがリニューアルされた紅茶。
色々な国で紅茶を買っているのだが、ラッフルズの紅茶は香りがすごく良い。シンガポールの紅茶としてはTWGが有名だが、僕はこっちの方が好き。ただし値段がそこそこするので免税手続きをお勧めしたい。店員さんもわかっているのか、言わなくても聞いてくれる。

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シンガポールスリングティー

ラッフルズといえば。
お土産用に購入した。グレナデンシロップを使ったカクテルの「シンガポールスリング」に寄せようとしたのか、味は少し甘め。

シンガポールの現状

呑気にお土産の情報を記載していたが、シンガポールの状況は厳しくなる。
現地の友人からは「感染者数はこれから急激に伸びていっている」という情報や、外出に際し政府からのメールに位置情報付きで返信しないと罪に問われる、などかなり厳しい方向に向かっていっている。
またネットにはこんな記事も。

1m以内に立っていたら牢屋行き。
もしくは80万円程度の罰金。
さすがシンガポール

【ニュージーランド】Kiwiの冒険

Kiwiの冒険

僕はニュージーランドの鳥、キーウィ。羽はあるけど小さすぎて飛べない。けれど僕だって他の鳥のように自由に空を飛んでみたい。それは叶わない夢かと思ってたけれど、あるとき気づいた。同じように飛べないはずの人間が、道具を使って空を飛んでる。きっとあの乗り物の先頭に行けば同じように空を飛べる。僕は空を飛ぶための冒険に出ることに決めた。


今日のフライトは日本の東京行き。久しぶりのフライトだ。コックピットに入り丁寧に準備をしていると、小さな先客がいるのを見つけた。

キーウィだ。鳥なのに飛べない、愛くるしい姿で操縦席の前方に座って前を見据えていた。
「おやおや、君も飛びたいのかな?じゃあ一緒に空へ行こうか。」


たくさんの小さなメーターや画面が光を発している。
空を飛ぶこの乗り物の先頭で前を見据えていると、優しそうな人が話しかけてきた。袖にたくさん金色の線が入っている服を着ていて、他の人たちが彼の指示を熱心に聞いている。事情を説明しているみたい。どうやら僕も一緒に空を飛べそうだ。
しばらくすると、準備を整えた乗り物は加速を始めて地上を走り出した。大きな音がする。風を切る音だ。透明な窓から前をみていると、ものすごい速度で景色が後ろに流れていく。
こんな速度、今まで知らなかった。空を飛ぶと言うのはこう言う事なのか。

 

離陸を開始すると、飛行機は加速を始める。ある一定の速度を越えると翼に十分な揚力を蓄え空中に舞い上がる。
その瞬間視界は前方から上へ向かう。今まで見えていた地上が、斜め上からの角度で視界に広がっていく。それと同じ分量で広く近くなっていく青い空。
何度経験してもこの瞬間が一番好きだ。地上を離れ、空に浮く。英語では”air borne”と言う。「空にうまれる」とはなかなかな言い方だ。
ふと前方を見ると、今日初めて一緒に飛ぶことになった普段は飛べない”彼”も、目をまん丸にして空を見据えている。どんな気持ちかな?驚いているかな、喜んでくれているかな。
日本までは長い航路だ。ゆっくり空を楽しんでくれ。

 

ある瞬間から、視界に広がる世界がいつも見慣れた角度を外れていく。体が上向きに、傾いて登っていくのがわかる。
これが空を飛ぶってことか。
みるみる視界が広がり、この前水を飲んだ河や、エサをとりに行った丘が全部いっぺんに見えた。空からみると、僕の暮らしていた世界はこんなにも小さかったのか。
乗り物はどんどん前に進み、今まで僕の知らなかった場所へと向かっていく。しばらくすると海が見えてきた。一度見たことがある、広くて大きな水の塊。この海の向こうには、どんな世界があるのだろう。これから向かう先に胸の高まりを感じる。空を飛ぶと言うのは、こんな高揚することだったのか。


陸地を離れ海の上に出る頃には、オートパイロットを入れて飛行機を自動で日本の方向に向けた。GPSはまっすぐ羽田を指している。あと数時間後には横浜の夜景も見えてくるだろう。
今日は小さな相棒が一緒で、思いのほか退屈しなそうだ。空を飛んだ”彼”が、何を感じてくれたのか。これからどんなことを思うのかな。
地上に戻ったら、聞いてみよう。「また一緒に飛ぶかい?」ってね。

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ニュージーランド キーウィ

就職活動の産物

この「KIWIの冒険」は僕が大学生だった今から十年ちょっと前、あるクリエイティブエージェンシーの入社試験を受けた際出題された作文を記憶で再現したもの。

試験が始まり問題用紙をめくると、"キーウィ"、”GPS”、”横浜”の3つのワードを必ず入れ原稿用紙3枚以内で文章を作れ、という指示が書かれていた。
課題を見たときに「”キーウィ”は絶対みんな果物を取り上げるだろうから、あえて鳥の方の”キーウィ”にしよう」という、ひねくれた思いつきから生まれたものだった。
またキーウィと飛行機を操縦するパイロットの2つの視点で交互に進める構成にしたのも、限られた時間で話をまとめるのに役に立った。
試験回答は提出してしまったので正確ではないが、概ねこんな感じだったと思う。

今回ニュージーランドを訪れるにあたり、この文章のことを思い出し再び記憶を頼りに書き記してみた。再現して読んでみると、あの時抱えていた葛藤や思いが透けて見えるのも面白いが、
それ以上に当時はそもそもキーウィのサイズ感をよく知らないので完全に間違え、手のひら大くらいの小さな鳥のイメージでいたことがわかる。
実際のキーウィはサッカーボールくらいサイズがあり、そもそもコックピットの窓のに乗ったら前方の視界を遮ってしまうくらいデカイのでパイロットはかなり困るだろう。
知らなかったからかけた文章だ。また「GPS」と「横浜」の差込みの急激さも、思いつきで書いたことが窺えるが、急遽出た課題に対する瞬発力という観点であればまあこんなもんだろうとも思う。
ちなみにその試験は無事にパスしたが、他社の内定をもらっていたので次の面接試験に進む前に辞退した。
あのままその会社に進んでいたらと考えたことはあまりないが、こうして今でも思い出す事ができ、それがニュージーランドで実際キーウィと対面するとなったときに、あの時間が巡り巡って今に至ることを知る。

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オークランド動物園

オークランド郊外にある動物園に”彼”はいる。
ちなみに場所はこの辺り。ダウンタウンからバスで一本、時間にして30分あれば確実に着く。

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Kiwiの部屋

kiwiは夜行性なので、この扉の向こうの飼育用トンネルの中にいる。
暗闇なので目が慣れるまでは大変だけど、けっこう動いているキウィを対面することができた。ただ暗すぎて写真は撮れなかった。
日本人にはキーウィフルーツの方が馴染みがあるが、もともとはこの鳥のキーウィに似ているからというのが果物の名前になったという。
もふもふした姿と、鳥なのに飛べないという愛くるしさ。

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Kiwiの部屋

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Kiwiの部屋

ニュージーランド人は自らのことをkiwiと呼ぶ。
キーウィのつがいは仲が良く、卵を産んだ妻をおもいやり夫が卵を温めて孵化させる。そんな互いに思いやる姿勢がニュージーランド人の心に響くかららしい。
(諸説あるそうです)
いずれにせよ、この愛くるしい鳥とこの国により親しみを持つことができそうだ。